お嫁に行った姫だるまの
ものがたり
  準備中です。
    
    みんながしあわせでありますように
静かになった工房で
        訪れてくれた方を思い出しながら、
        姫だるまの顔を描きます。
        私のなによりしあわせな時間です。
ふと思えば、
        姫だるまをみなさまのもとに送り出すときは、
        花嫁を見送るときようなの気持ちに。
        まさしくわが家の娘(姫)です。
姫はなにも言わずに、
        ただそっとそばにいてくれます。
        悩みを聞いてくれ、
        背中を押し、
        元気づけてくれる。
        嫁ぎ先でもそんな存在になってくれますように。
        このしあわせの縁が途切れないように。
        祈りを込めて筆を走らせます。
        丹念に、幾重にも。
    大分県竹田市の大自然のなかで生まれた姫だるまは、代々後藤家のお嫁さんによって受け継がれ、女性とともに生きてきました。
姫だるまは、家庭円満・商売繁盛を願っただるまで、その想いは松竹梅と菱形に込められています。家庭円満では、松竹梅の松がお父さん・梅がお母さん・竹が子どもを表しています。頭の金の菱形は、家庭の中で女性(母)が太陽のように笑って過ごせますようにという願いが込められています。
背中の宝珠は厄除けを表し、宝珠を逆さすると女性の子宮を模しているため、子宝・子孫繁栄にもご利益があると言われています。
  
    わたしたち姫だるまは、
      この大分県竹田市の大自然の中で生まれます。
      どれも外せない大切な工程を経て、
      やさしく、かわいらしい花嫁になって
      あなたのもとへ嫁入りするのです。
    照明さんが木型に新聞紙を
      幾重にも貼って乾かして
      最後におめかしの和紙を。
      木型から外したら、
      何度でも起き上がれるように重りを入れて、
      たのしい音がするように
      小石を入れてくれます。
    久美子さんがおしろいを塗って、
        太陽を表す菱形と松竹梅をあしらった
        朱色の美しい十二単を着せてくれます。
        ひとつひとつの作業が手作業の姫だるま。
        手間と時間がたくさんかかります。
        もう少し待っていてね。
    お嫁に行く前におめかしをします。
      明子さんが願いやしあわせを祈りながら
      私のお顔と背中の宝寿を描いてくれます。
      お顔はやさしい表情に。
    着物とお顔を整えて
      かわいらしいお嫁さんに。
      化粧箱に包まれると
      久美子さんのいってらっしゃいが聞こえます。
      みなさんのところへ。
      
嫁ぎ先のみなさまに末長く愛されますように。
みんながしあわせでありますように。
準備中です。
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